サッカー好きなら誰もが一度は目にしたことがあるであろう決め台詞「Here we go!」。この3つの単語が投稿された瞬間、世界中のサッカーファンが歓喜し、移籍市場のトレンドが瞬く間に塗り替えられる。その発信者こそ、現代サッカー界で最も影響力を持つジャーナリストの一人、ファブリツィオ・ロマーノである。
(出典: Fabrizio Romanoのinstagramより)
移籍市場における絶対的存在
欧州リーグでは夏と冬の年2回、移籍市場が開かれる。スター選手の移籍やビッククラブへの加入は、世界中のサッカーファンが最も楽しみにしているイベントの一つだ。数多くのメディアが移籍情報を報道する中で、「この人が発信したら間違いない」と多くのファンから絶対的な信頼を寄せられている人物がいる。
それが、イタリア人サッカージャーナリストのファブリツィオ・ロマーノだ。彼の影響力は凄まじく、「Here we go!」は移籍確定の合図として機能している。この投稿がなされると、瞬く間に全世界に拡散され、移籍市場のトレンドを完全に支配する。
驚くべきことに、移籍を希望する選手自身が彼にダイレクトメッセージを送り、自分の移籍情報を発信してほしいと依頼することもあるという。これは、ロマーノの発信がいかに移籍市場において決定的な役割を果たしているかを物語っている。
圧倒的なフォロワー数が示す影響力
(出典: Fabrizio Romanoのinstagramより)
ロマーノのソーシャルメディアでの影響力は数字にも表れている:
- X(旧Twitter): 約2,600万フォロワー
- Instagram: 約4,100万フォロワー
これらの数字は、サッカージャーナリストとしては圧倒的であり、大手メディアを上回るフォロワー数を誇っている。彼一人の発信力が、既存のメディア企業に匹敵する、あるいはそれを超える影響力を持っているのだ。
ロマーノはいかにして影響力を得たのか
運命を変えた17歳の決断
ファブリツィオ・ロマーノ
1993年2月21日生まれ(32歳)
イタリア・ナポリ出身
若くしてジャーナリズムに興味を持ったロマーノは、17歳という若さでサッカーライターとしての活動を始めた。小さなサイトでサッカーについて発信していた彼の人生を大きく変えたのは、バルセロナの下部組織ラ・マシアで働いていたある男性からの突然の連絡だった。
「ラ・マシアの選手数人をイタリアに移籍させたいから記事を書いてほしい」
その選手こそ、後にセリエAで大活躍することになるマウロ・イカルディとジェラール・デウロフェウだった。ロマーノが彼らの移籍に関する情報を発信し、イタリアのクラブにアプローチをかけたことが、彼のサッカーライターとしての真の始まりとなった。
初スクープから世界的影響力へ
イカルディのサンプドリア加入報道が、ロマーノが初めて発信した移籍ニュースである。その後のインテルへの移籍もいち早く報じ、これによってロマーノはイタリア国内で一気に知名度を上げた。
19歳の時、イタリアの大手スポーツ専門チャンネル「Sky Sports Italy」に入社。ここで、ヨーロッパの代理人、ディレクター、選手などとの広範な交友関係を築いていく。この人脈こそが、後の成功の基盤となった。
当初はイタリアサッカーの報道が中心だったロマーノが、全世界で注目される存在になったターニングポイントは、ブルーノ・フェルナンデスのマンチェスター・ユナイテッド移籍の報道だった。様々な移籍の噂が飛び交う中、彼の発信直後に公式発表がなされたことで、全世界のサッカーファンから注目されるようになった。
成功の秘訣:現場主義と人脈構築
世界を飛び回る情報収集
ロマーノは取材のために世界中を飛び回り、注目される多くの試合現場に足を運んでいる。特にチャンピオンズリーグなどの重要な試合では、移籍に関わる重要人物と直接会える貴重な機会となるためだ。
95%は現場の人間から
彼のスクープの95%は、クラブの代理人や選手に関わる人物からの情報である。現場の人間との交友関係を大切にし、ロマーノ自身が直接連絡を取ることが正確な情報を得るための重要な要素だと彼は語っている。
残りの5%は、ホテルマンや試合会場近くの店舗従業員などからの情報。一見些細に思える人々との関係も、ネットワーク構築において謙虚さと誠実さを持って大切にしている。
驚異的な労働量
移籍期間中、ロマーノは1日17時間以上もスマートフォンを使用している。平均50回の通話と1,000件以上のメッセージのやり取りを日常的に行っているという。
この膨大な時間と労力を投じて、100%信頼できる人脈と成功体験を長年にわたって構築してきた。これこそが、現在のロマーノの発信力と信頼性の源泉なのである。
ロマーノについての興味深い事実
- ワンマンオペレーション: 動画・画像編集以外のすべての活動を一人で行っている
- 正確性重視: 投稿のスピードよりも正確性を重視するスタンス
- ワトフォードファン: 彼はイタリア人がオーナーのワトフォードのファンである
現代サッカーメディアの新たな形
ファブリツィオ・ロマーノの成功は、従来のメディア構造を根本から変えた。一人のジャーナリストが、大手メディア企業以上の影響力を持つ時代。それは単なる偶然ではなく、徹底した現場主義、長年にわたる人脈構築、そして読者・視聴者への誠実な姿勢の結果である。
「Here we go!」の3つの言葉に込められているのは、単なる移籍確定の報告ではない。それは、現代サッカー界における情報の価値と、それを伝える者の責任の重さを象徴している。
移籍市場が開くたび、世界中のサッカーファンがロマーノのSNSを注視する。この現象こそが、現代サッカーメディアの新たな潮流を如実に表しているのではないだろうか。