アーセナル24-25シーズン総括:なぜ「史上最強」でも優勝できないのか?

れんくん

3年連続2位ってすごくない?なんで優勝できないって言われるの?

田中先生

確かにすごいんだ。でも、これだけ強いのに1位になれないのには理由があるんだよ

目次

はじめに:3年連続2位の現実と矛盾

アーセナルがまたも2位でシーズンを終えた。3年連続での準優勝。数字だけ見れば、これは間違いなく「成功」だ。しかし、その内容を詳しく見ると、深刻な矛盾が浮かび上がる。

なぜマンチェスター・シティやリヴァプールには勝てるのにシーズン後半になると中位クラブ相手に勝ちきれなくなるのか?
今回は、アルテタ・アーセナルの真の実力と、優勝を阻む構造的な問題について、この矛盾を中心に徹底分析したい。

「史上最強アーセナル」の圧倒的な数字と致命的な盲点

攻守両面での歴史的成果

まず、アーセナルの実力を正しく評価しよう。23-24シーズンの数字は驚異的だった:

  • プレミアリーグ史上最多の27勝(クラブ130年の歴史でも最多)
  • リーグ最少失点29(最多無失点18回)
  • 総得点91(プレミア創設以来のクラブ記録)
  • 対ビッグ6無敗(マンチェスター・シティ、リヴァプール両方に勝ち越し)

そして24-25シーズンも継続的に高いレベルを維持している:

  • 20勝14分4敗(勝ち点74)
  • 69得点34失点(+35の得失点差)
  • 3年連続2位という驚異的な安定性

これらの数字は、どの角度から見ても「優勝に値する」レベルだ。

しかし、致命的な盲点が存在する
ここに最大の問題がある:アーセナルはビッグマッチでは力を発揮するが、シーズン後半になると中位クラブ相手に勝ちきれない試合が増える。

典型的なパターン:

  • ビッグマッチでは見事な戦術で勝利を収める
  • しかし中位クラブ相手で「勝ちきれない」試合が後半戦に頻発
  • 1-1や2-2のドローが積み重なり、勝ち点を取りこぼす
  • 結果として、優勝に必要な勝ち点に届かない

これは戦術的な問題であり、アルテタ・システムの構造的欠陥を示している。

れんくん

えー!27勝って歴史で一番なの?それで優勝できないの??

田中先生

そう、だからこそ不思議なんだ。数字だけ見れば完璧に近いチームなんだよ


アルテタ・システムの光と影:完璧ゆえの脆さ

戦術的完成度の高さ

アルテタの戦術は確かに美しく効果的だ。ポジショナルプレーをベースとした流動的な4-3-3は、「プレミアリーグで最も難解で先進的」と評される。

攻撃時の特徴:

  • 5レーンを使った緻密なビルドアップ
  • 攻撃時と守備時でシステムを可変
  • サカ&マルティネッリの個人能力を最大化

守備時の特徴:

  • 高強度のハイプレス
  • マンツーマン気味の厳格なマーキング
  • システムの流動性(4-4-2、4-2-4への変化)

しかし、「はまらない時」の自滅パターン

ここに最大の問題がある。アルテタの戦術は二極化しやすい:

成功パターン:

  • 戦術がはまった時の破壊力は絶大
  • レアル・マドリード撃破のような歴史的勝利

失敗パターン:

  • はまらない時は「ただ旋回している」だけの攻撃
  • ボール保持率は高いが、チャンス創出に繋がらない
  • 相手の守備ブロックを崩せずに時間だけが過ぎる
れんくん

アルテタ監督の戦術って何がそんなに難しいの?

田中先生

例えば、攻撃の時と守備の時で選手のポジションがガラッと変わるんだ。

れんくん

すごく複雑だけど、うまくいった時はすごいんだろうね!

優勝を阻む5つの構造的問題

1. ビッグマッチでの強さと「勝ちきれない」問題の矛盾

ビッグマッチでの安定感:

  • 同格のライバル相手には互角以上に戦える実力
  • 戦術的な駆け引きで真価を発揮
  • モチベーションと集中力が最高レベルに到達

中位クラブ相手での「勝ちきれない」問題:

  • 実力的には上回っているが、決定打に欠ける
  • 相手が守備ブロックを作ると、崩し手に時間がかかる
  • 特にシーズン後半、疲労と研究により「勝ちきる」力が低下
  • 結果として1-1、2-2のドローが頻発し、勝ち点を取りこぼす

2. アルテタの「頑固さ」問題

これは多くの観戦者が感じている問題だ。負けている時でも戦術を変えられないアルテタの頑固さ。

具体的な問題:

  • 0-1で負けていても、同じシステムを続行
  • 選手交代はするが、戦術的アプローチは変更しない
  • 「プランB」の選択肢が著しく限定的

キャラガーが指摘したように、「昨シーズンの彼はビッグマッチで自分より優れたチームと対戦した際、考えを変えていた」が、最近はその柔軟性を失っている。

3. ウイング依存の危険性

アーセナルの攻撃はサカとマルティネッリのウイング攻撃に大きく依存している。

成功時:

  • 両ウイングが機能すると、得点確率が飛躍的に向上
  • サイド攻撃からの決定的チャンス創出

失敗時の致命的問題:

  • ウイング攻撃が封じられると、代替手段が極端に少ない
  • 中央突破の選択肢が限定的
  • ストライカー不在により、クロス攻撃の効果も薄い

「ウイングで殴ることができない試合が急に現れてしまう」ことで、攻撃が完全に機能停止に陥る。

れんくん

サカとマルティネッリが止められたら、他に点を取る方法はないの?

田中先生

まさにそこが問題なんだ。ウイングに頼りすぎているんだよね

4. 戦術依存による「勝ちきれないパターン」

アルテタの戦術は高度すぎるが故に、機能しない時に勝ちきれない問題が生じる。

典型的な「勝ちきれない」パターン:

  1. 相手が守備ブロックを作る
  2. ビルドアップで延々とボールを回す
  3. 最終的な崩しに至らない
  4. 時間だけが過ぎ、場合によってはカウンターで失点
  5. 追いつこうとして、さらに同じ戦術を継続
  6. 結果として引き分けか、最悪の場合敗戦

これは「ただ旋回している」だけの攻撃と揶揄される所以だ。

5. 移籍戦略の不可解な問題とアルテタの哲学

最も理解しがたいのが、ストライカー獲得の先送り問題だ。

長年の課題:

  • 2022年以降、毎シーズン「ストライカーが必要」と言われ続ける
  • 夏の移籍市場では他のポジションを優先
  • ウイング攻撃が封じられた時の代替手段として、中央からの得点が不可欠
  • しかし、この根本的な解決策を先送りし続けている

アルテタの独特な移籍哲学:

しかし、この問題には深い理由がある。アルテタは「単に点を取れる選手」ではなく、**「器用な選手」**を求めている。

これは彼の戦術哲学と直結している:

  • ビルドアップに参加できるFW
  • 守備からの連動ができる選手
  • チーム戦術に完全にフィットする万能型

さらに、アーセナルの補強ポリシーには厳格な基準がある:

  • 素行がよくマネジメントがしやすい選手を重視

この結果、「即戦力のゴールゲッター」よりも「チームにフィットする選手」を優先してしまい、決定力不足が慢性化している。

れんくん

なんでストライカーを取らないの?点を取る人がいれば優勝できるじゃん!

田中先生

実はそう簡単じゃないんだ。アルテタ監督は特別な条件の選手を探しているからね

れんくん

『器用な選手』って何?普通に点を取れる人じゃダメなの?

田中先生

アルテタ監督は、点も取れて、パスも上手で、守備もできる『何でもできる選手』が欲しいんだ

後半戦失速の構造分析

シーズン後半の典型的なパターン

過去3年間、アーセナルは同じパターンで失速している:

シーズン前半:

  • ビッグマッチで勝利を重ね、首位争いに参加
  • 戦術的な完成度の高さが注目される

シーズン後半:

  • 中位クラブ相手で「勝ちきれない」試合が増加
  • 本来なら勝利すべき相手とのドローが頻発
  • 結果として、優勝争いから徐々に脱落し、最終的に2位でフィニッシュ
れんくん

毎年同じパターンで負けちゃうのは、なんか悔しいね…

なぜ後半戦に崩れるのか?

1. 相手の研究と対策

  • シーズン前半の成功パターンが研究される
  • 特に「引いて守る」戦術への対策が浸透

2. 戦術的硬直化

  • アルテタの頑固さが裏目に出る
  • 状況に応じた戦術変更ができない

3. 身体的・精神的疲労

  • 高強度の戦術を維持する負担
  • シーズン終盤での集中力低下とプレッシャーの蓄積

解決への処方箋:「あと一歩」を埋めるために

短期的な改善策

1. 戦術的柔軟性の向上

  • 状況に応じたシステム変更
  • 「プランB」の明確化
  • 守備的な相手への崩し手の多様化

2. ストライカーの獲得とアルテタ哲学の調和

  • ウイング攻撃が封じられた時の代替手段
  • クロス攻撃の有効化
  • 中央突破の選択肢拡大
  • 重要:アルテタの求める「器用な選手」条件を満たすFWの発掘
  • 素行が良く、チーム戦術にフィットできる万能型ストライカーの獲得

3. 中位クラブ相手での「勝ちきる力」の強化

  • 守備ブロック相手への崩し手の多様化
  • より直接的で効率的な攻撃パターンの習得
  • シーズン後半の疲労を考慮した戦術調整

長期的な展望

アーセナルは確実に「黄金時代を築こうとしている」段階にある。3年連続2位という成果自体が、その証拠だ。

問題は複雑だが、解決不可能ではない。アルテタの戦術的才能と、クラブの強固な基盤があれば、「あと一歩」を埋めることは可能だろう。

れんくん

アーセナルって、パズルのピースが1個だけ足りない感じなんだね。そのピースが見つかれば絶対強くなりそう!


結論:矛盾を乗り越えた先に

アーセナルの現状は矛盾に満ちている:

  • 史上最強なのに優勝できない
  • ビッグマッチでは力を発揮するのに、中位クラブ相手に勝ちきれない
  • 美しい戦術なのに決定力に欠ける
  • 完璧なシステムなのに脆さを抱える

しかし、これらの矛盾こそが、アーセナルの「あと一歩」の正体だ。

次のシーズンへの課題は明確:

  1. 戦術的柔軟性の向上
  2. 中位クラブ相手での「勝ちきる力」の強化
  3. ウイング依存からの脱却
  4. ストライカー問題の解決

これらを克服できれば、ついに「ガナーズの時代」が到来するかもしれない。

アルテタ・アーセナルの挑戦は続く。そして、その挑戦こそが、プレミアリーグを面白くしている。

れんくん

アーセナルって本当はすごく強いのに、ちょっとしたことで優勝を逃しちゃうんだね…

田中先生

そうなんだ。でも、その『ちょっとしたこと』を解決できれば、きっと優勝できるよ

れんくん

来年こそは優勝してほしいな!

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