
エンバペが退団したのにどうしてPSGはCLを制覇できたの?



それにはいくつかの理由があるよ!
歴史が動いた夜 - PSGついに頂点へ
2025年5月31日、ミュンヘンのアリアンツ・アレーナで歴史が動いた。パリ・サンジェルマン(PSG)がインテル・ミランを5-0で圧倒し、クラブ創設以来初となるUEFAチャンピオンズリーグタイトルを獲得したのだ。しかし、この勝利の真の意味は、単なるタイトル獲得以上のものだった。それは、「40ゴール決める1人の選手よりも、12ゴールずつ決める4人の選手の方がいい」というルイス・エンリケ監督の哲学が現実となった瞬間でもあった。





エンバペみたいに40ゴール決める選手がいた方が強いんじゃないの?



いい質問だね!でも考えてみて。40ゴールの選手1人がケガしたり、相手に厳しくマークされたりしたらどうなる?



あ…他の選手の得点力が低かったら、チーム全体で弱くなっちゃう!



そうなんだ。12ゴールずつ決める選手が4人いれば、誰か1人が調子悪くても他の3人でカバーできるよね
苦難のスタート:誰もが疑った革命の始まり
しかし、この歴史的勝利への道のりは決して平坦ではなかった。シーズン序盤のPSGは、エンリケの革命的なアプローチに適応するのに苦労していた。10月1日から12月初旬にかけての12試合で5勝4引き分け3敗という惨憺たる結果を記録。チャンピオンズリーグの新しいリーグフェーズでは、最初の5試合でわずか1勝しか挙げることができず、36チーム中25位という危険な状況に陥っていた。
批判の声が高まる中、エンリケ監督は自身の哲学を貫き続けた。「我々は常に自分たちの能力を信じていた。勝てていない時でも、いつかうまくいくと確信していた」とヴィティーニャが後に語ったように、チーム内部では信念が保たれていた。
エンリケが仕掛けた静かな革命:バルセロナとの対比
ネイマール、メッシ、そしてキリアン・エンバペという個のスターたちが去った後、PSGは最も無私的で組織的なチームへと変貌を遂げた。この変化の立役者となったのが、2023年夏に就任したルイス・エンリケ監督だった。
興味深いのは、エンリケ監督自身の進化だ。2015年にバルセロナでチャンピオンズリーグを制覇した際、彼はメッシに「守備免除」を与え、個の才能を最大限に活かす戦術を採用していた。しかし今回のPSGでは正反対のアプローチを取った。全員が守備に参加し、誰もが特別扱いされない組織的なサッカーを徹底したのだ。
スペイン人監督は就任当初から明確なビジョンを持っていた。「チームとしてプレーするために多くの仕事があることを知っていた」と語る通り、彼は段階的にチーム改革を進めていった。まずはプレッシング、次にカウンタープレッシング、そしてフルバックのポジショニングと、一つずつ要素を積み上げていく手法を取った。
攻撃革命:多極化がもたらした予測不能性
得点源の分散化
従来のムバッペ一点集中型から、PSGは複数の得点源を持つチームへと変貌した。デンベレが偽9番として様々なエリアに動き、ドゥエとクヴァラツヘリアが左右から脅威を与える流動的な攻撃システムを構築。これにより相手の守備準備が困難になり、一人がマークされても他からの脅威が継続する状況を作り出した。



偽9番って何?普通の9番と何が違うの?



普通の9番はゴール前でずっと待ってるけど、偽9番は色んな場所に動き回るんだ。敵の守備者が『あれ?マークする相手がいない!』って困っちゃうのさ



なるほど!かくれんぼみたいに相手を混乱させるんだね!
デンベレの偽9番革命
ナチュラルウィンガーであるデンベレが中央で自由にローミングし、スペースを作り出しながらチームメイトとのコンビネーションを生み出す偽9番の役割は、従来のハーランドのようなセンターフォワードのトレンドとは一線を画すものだった。
流動性がもたらすカオス
バルコラ、クヴァラツヘリア、ドゥエといった右利きの選手たちが左サイドから内側にカットインしながら、両サイドで位置を交換し続けることで、相手ディフェンスにさらなる混乱をもたらした。
戦術的基盤:4-3-3の現代的解釈
エンリケのシステムは、シンプルさの中に革新性を秘めた流動的な4-3-3フォーメーションだった。
特徴的なのは以下の点だ:
- フィニッシャータイプのセンターフォワードなし
- 伝統的な「10番」なし
- 指定されたプレイメイカーなし
- 固定された守備的ミッドフィルダーなし
ヴィティーニャ、ジョアン・ネベス、ファビアン、ザイール・エメリといった全方位型の選手たちが、エネルギッシュで動的、そして柔軟な中盤ユニットを形成している。
守備革命:メッシからの学び、そして超越
前線3枚にボールロスト後すぐに積極的なプレスをかけさせる戦術により、PSGは相手にカオスをもたらし、「即座奪回」を実現する仕組みを完成させた。これは、エンリケ監督にとって大きな戦術的進化を意味していた。
2015年のバルセロナでは、エンリケはメッシを守備から免除し、彼の攻撃的才能を最大限に活かすことでチャンピオンズリーグ制覇を成し遂げた。「メッシのような天才には守備をさせるべきではない」という当時の哲学は、確かに結果をもたらした。しかし、PSGでは正反対のアプローチを採用した。
ムバッペ時代の「守備免除」的な要素を完全に排除し、デンベレ、バルコラ、クヴァラツヘリアといった攻撃的選手も含めて全員がボール奪取に参加する流動的な守備を実現した。これは現代サッカーにおける重要な教訓でもある:いかなる才能も、組織の一部として機能してこそ真の力を発揮するということだ。
特に重要なのは規律の確立だった。デンベレがアーセナル戦前の練習に遅刻した際、エンリケは彼をスカッドから外した。PSGは0-2で敗れたが、監督の権威は確立された。エンリケ後に「今シーズンのベストな決断だった」と語っている。
若き才能の開花
この革命を支えたのは、経験豊富な選手だけではなかった。
特に19歳のデジレ・ドゥエの台頭は目覚ましいものがあった。昨シーズンはレンヌで1600分の出場で8GAを記録し、将来有望株として注目されていたが、パリ移籍後はなかなか出場機会を得られずにいた。
しかし、エンリケ監督が彼をスターティングラインナップに固定すると、状況は一変した。左右両サイドでプレーできる万能性を持つドゥエは、1月にクヴァラツヘリアが加入した後も重要な戦力として機能し続けた。攻撃でも守備でも絶対的なゲームチェンジャーとなり、疲れ知らずのランナーとしてチームに貢献した。
冬の補強で加入したクヴァラツヘリアの存在も大きかった。ドゥエとクヴァラツヘリアがPSGに疲れ知らずのウインガーとなりハキミとメンデスが世界最高のサイドバックとなった。
数字で見る変革の成果
PSGは2025年、最も攻撃的なチームとなり、最も成功したドリブル数、最高のプレッシングとカウンタープレッシング(最多ボール回収数)を記録した。チャンピオンズリーグ全体で最多チャンス創出(1試合あたり4.2回)、最多パス数、最多シュート数(1試合あたり18.9回)を記録している。
覚醒への軌跡:ザルツブルクからシティへの奇跡
沈黙を破ったのは12月10日のRBザルツブルク戦だった。3-0の快勝により、エンリケの段階的な構築プロセスが実を結び始めた。しかし、真の転換点となったのは1月22日のマンチェスター・シティ戦だった。
雨の降りしきるパルク・デ・プランスで、PSGは前半でグリーリッシュとハーランドのゴールにより0-2とリードを許した。チャンピオンズリーグ新フォーマットで苦戦を続けてきたPSGにとって、この敗戦は決勝トーナメント進出すら危うくする可能性があった。
しかし、後半11分からの約30分間で全てが変わった。4-2での劇的な逆転勝利は、単なる1試合の結果以上の意味を持った。「我々の能力を信じていたが、シティ戦ですべてがクリックした」とヴィティーニャが後に振り返るように、この試合でエンリケの戦術哲学がついに開花したのだ。
この勝利以降、PSGはシュトゥットガルト(4-1)、ブレスト、リヴァプール(アンフィールドでPK戦)、アストン・ヴィラ、アーセナルを次々と撃破。プレッシャーに屈することなく、敵地でも権威と自信に満ちたプレーを見せ続けた。



0-2から4-2って、僕たちの少年団でもそんな逆転ないよ!すごすぎる!



この試合が全てを変えたんだ。チーム全員が『俺たちやればできるじゃん!』って自信を持てたんだよ
栄光への道のり:決勝での完璧な演技
2025年5月31日、ミュンヘンのアリアンツ・アレーナで、サッカー史に残る一方的な決勝戦が繰り広げられた。PSGがインテル・ミランを5-0で粉砕し、チャンピオンズリーグ決勝史上最大の得点差での勝利を記録した。
決勝では、PSGの流動的な動きがインテルの5バック相手に様々なスペースへの攻撃を可能にした。明確なセンターフォワードなしで戦うことで、インテルの中央センターバックであるアチェルビにマークする相手を与えず、PSGにフリーの選手を作り出した。
20分で決まった勝負:チャンピオンズリーグ史上初の記録
ハキミとドゥエの2得点、これはチャンピオンズリーグ決勝史上初めて、最初の20分で2得点を記録するという快挙だった。ハキミが右サイドでドゥエと連携し、メンデスも高い位置でクヴァラツヘリアをサポートする中、PSGのパッシングと攻撃リズムはインテルの5-3-2ブロックには手に負えないものとなった。
ドゥエの歴史的記録
後半18分勝負にとどめを刺すゴールが生まれた。ヴィティーニャが絶妙なスルーパスでドゥエをペナルティエリア内に送り込み、19歳は冷静にゾマーを破った。
ドゥエは1962年のベンフィカのエウゼビオ以来、ヨーロッパカップ決勝でブレースを決めた3人目のティーンエイジャーとなった。
インテルは今シーズン、チャンピオンズリーグ全体でリードを許していた時間はわずか998秒だった。そんなインテルがPSG相手には決勝で0-5という衝撃的な結果でCLは幕を閉じた。



5-0って…すごすぎて言葉が出ない!インテルも強いチームなのに、まるで子供扱いだよ!」



これがチーム全体で戦うサッカーの力なんだ。
みんなで協力すると信じられない力が出るんだよ
結論:指導者の進化と組織力の勝利
PSGの2025年チャンピオンズリーグ制覇は、複数の点で重要な意味を持っている。まず、現代サッカーにおける組織力の重要性を証明したこと。そして、ルイス・エンリケという指導者の進化を示したことだ。
バルセロナ時代のエンリケは、メッシという唯一無二の才能を守備から解放することで成功を手にした。しかし、PSGでは「全員守備、全員攻撃」という正反対の哲学で再び頂点に立った。これは単なる戦術的変化ではなく、時代に合わせて進化し続ける指導者の姿勢を表している。
シーズン序盤の苦戦は、革命に伴う必然的な痛みだった。10月から12月にかけての低迷期、36チーム中25位という危機的状況からの這い上がりは、エンリケの信念とチームの結束力なくしては不可能だった。12月のザルツブルク戦、そして1月のシティ戦での劇的逆転は、単なる勝利以上に、新しいPSGの誕生を告げるものだった。
純粋なスターパワーと華やかさを追求することで、PSGはスター集団としての地位を確立した。しかし、最大の栄誉を手にしたのは最大のスターたちを失い、組織力、エネルギー、そして現代的な戦術で相手を圧倒することを学んだ時だった。
エンリケが示したのは、サッカー界における永続的な真理だ:時代は変わり、戦術は進化し、偉大な指導者もまた学び続けなければならない。個人の才能を否定するのではなく、それを組織の中で最大限に活かす方法を見つけること。それが、PSGをついに欧州の頂点へと導き、エンリケ自身を2つのクラブで大陸三冠を達成した史上2人目の監督へと押し上げたのである。



最初はエンバペがいなくなって弱くなると思ってたけど、チーム全体で戦う方がかっこいいね!



素晴らしい気づきだね。サッカーは11人でやるスポーツ。一人のスターよりも、11人が心を一つにして戦う方が強いんだ



来年のPSGも楽しみ!どんなサッカーを見せてくれるかな?
この記事は、PSGの歴史的なチャンピオンズリーグ初制覇を通じて、現代サッカーにおける組織戦術の重要性と、個人に依存しないチーム作りの価値を検証したものです。