MSN結成への道のり

現代サッカー史上最も印象的な攻撃ユニットの一つ、メッシ(M)、スアレス(S)、ネイマール(N)による「MSN」。2014年から2017年まで、わずか3シーズンという短期間ながら、バルセロナの黄金期を支えたこの3トップは、戦術的な完成度と個人能力の両面で歴史に名を刻んだ。
2013-14:ネイマール加入とチーム再構築の始まり
2013年夏、サントスから移籍してきたネイマールがバルセロナでのキャリアをスタート。
2014-15:ルイス・エンリケ体制下での真の始動
2014年夏、チームに大きな変化が訪れる。ルイス・エンリケが新監督に就任し、リヴァプールからルイス・スアレスが加入。しかし、スアレスはW杯での噛みつき処分により開幕から出場停止となっていた。
MSN初結成の瞬間 第9節でスアレスが処分から復帰を果たし、ついにMSNが初めて結成された。この瞬間から、バルセロナの攻撃は新たな次元へと到達することになる。

この3人って本当に一緒にプレーしてたの?すごすぎる!



そうだよ!2013年から2017年まで一緒にプレーし、サッカー史上最強のトリデンテと言われていたんだ
黄金の3シーズン:戦術とスタッツで見るMSNの進化
2014-15シーズン:完璧なデビュー
個人スタッツ(リーガ・エスパニョーラ)
- メッシ: 38試合 43G 21A
- スアレス: 27試合 16G 16A(復帰10試合は2Gと苦戦するも、その後復調)
- ネイマール: 33試合 22G 9A(2年目でバルセロナのスタイルに完全適応)
獲得タイトル
- ラ・リーガ制覇(レアル・マドリードからの逆転優勝)
- チャンピオンズリーグ制覇
- コパ・デル・レイ制覇
- UEFAスーパーカップ、FIFAクラブワールドカップも制覇し、計5冠達成
ラ・リーガ、CL、コパ・デル・レイの3冠は、2008-09年のペップ・グアルディオラ時代以来の快挙だった。
エンリケはメッシをペップバルサ時代と同様にゼロトップで起用していて、スアレスが復帰した9節以降もメッシはゼロトップとして中央で起用され、スアレスは右ウイングで起用されていたがメッシがスアレスに「おいGordo(スアレス)、俺(メッシ)が右サイド行くから中央でプレーしろ」と言われMSNの形が生まれたという秘話が後のスアレスへのインタビューで明かされた。
Gordo…日本語でデブ、太っちょ
2015-16シーズン:メッシ不在でも揺るがない結束力
戦術的課題への対応 第6節でメッシが負傷し、MSNのバランスが崩れる危機に直面。しかし、スアレスとネイマールがメッシの穴を見事に埋め、エースの不在を感じさせない戦いを披露した。
個人スタッツ(リーガ・エスパニョーラ)
- メッシ: 33試合 26G 16A
- スアレス: 35試合 40G 18A(リーガ得点王獲得)
- ネイマール: 34試合 24G 16A
チーム成績
- 公式戦35戦連続無敗達成
- ラ・リーガ2連覇
- コパ・デル・レイ制覇
MSN依存の深刻化 リーガでの全得点112Gのうち、実に90G(80.4%)がMSNによるもの。失点はわずか29Gという圧倒的な数字だったが、同時にMSN依存という課題も浮き彫りになった。
2016-17シーズン:戦術バランスの崩壊と終焉
チーム構成の変化 スタメン11人のうちスペイン人がセルジ・ロベルト1人のみという、カンテラ色の薄い多国籍チームに変貌。
戦術的問題の表面化 メッシ依存が進み、戦術バランスが徐々に崩れ始める:
- メッシの守備免除により右SBが攻守の激しい上下動を強いられる
- 中盤がカバーのために守備参加を増やし、本来のポゼッション力が低下
- 攻撃時4-3-3から守備時4-4-2への変形で、ネイマールが中盤まで戻る負担増
個人スタッツ(リーガ・エスパニョーラ)
- メッシ: 34試合 37G 12A
- スアレス: 30試合 28G 15A
- ネイマール: 35試合 13G 14A(守備負担増により数字が低下)
ネイマール移籍とMSN解体 コパ・デル・レイ3連覇は達成したものの、リーガではレアル・マドリードに屈し3連覇はならず。エンリケ監督退団、そしてネイマールのPSG移籍により、MSNは解体された。
ネイマール移籍の真相:2番手という現実
2017年のCLラウンド16、PSG戦でのカンプ・ノウの奇跡では、ネイマールのパフォーマンスはメッシに並ぶ、いや超えていたかもしれない。しかし翌日の新聞の表紙の多くを飾ったのはメッシだった。
この出来事は象徴的だった。ネイマールがセレソンの10番として、クラブでも圧倒的な数字を残そうとも、常に「メッシの次」「クラブの2番手」という位置づけから脱却できなかった。メッシがいなければバロンドールと言われたシーズンが何度もあったにも関わらず、絶対的エースになれない現実に直面していたのかもしれない。
エンリケ・バルサの戦術システム
ポゼッション&ハイプレス戦術
中盤の構築 イニエスタ、ブスケッツ、ラキティッチがポゼッションを固め、MSNに自由を与える基盤を構築。
メッシの偽9番的役割 メッシが右ウイングと中央を行き来する流動性のある動きで、相手守備陣を混乱させる。メッシがボールを持つことで複数の相手選手を引き寄せ、スアレスとネイマールが空いたスペースを効果的に活用。
3人の連携による崩し
- メッシの動きに連動したスアレス、ネイマールの動き
- 逆サイドでの1対1局面の創出
- 3人の連携で相手守備陣を完全に崩壊させる戦術
MSNの数字で見る偉大さ
3シーズン通算成績(全コンペティション)
- メッシ: 153G 75A
- スアレス: 120G 67A
- ネイマール: 90G 61A
- 合計: 363G 203A



3年間で300ゴール以上って…異次元過ぎない!?
獲得タイトル
- ラ・リーガ制覇:2回
- コパ・デル・レイ制覇:3回
- チャンピオンズリーグ制覇:1回
- FIFAクラブワールドカップ:1回
MSNが特別だった理由:ロマンと現実
技術的完成度を超えた魅力
MSNの特別さは、単なる実力を超えた「ロマン」にある。南米サッカー界の3つの強豪国(アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル)を代表する歴代最高レベルのエースストライカーが、同時期に同じクラブに集結するという奇跡的な出来事だった。
儚さが生んだ伝説性
皮肉にも、この夢のような組み合わせがあまりにも理想的すぎたがゆえに、わずか3シーズンという短期間で終わりを迎えた。この儚さこそが、MSNをより一層特別で印象深い存在にしている。



この3人がいたバルセロナを見てみたかったなあ。今度お父さんと昔の試合を見てみる!
結論:現代サッカー史に刻まれた3年間
MSNの魅力は技術的な完成度だけでなく、「夢が現実になった瞬間の美しさと、その夢の短さ」という物語性にある。歴代の3トップの中でも圧倒的なスタッツを誇りながら、個性的な3人が連携し、メッシを中心としたチーム作りを理解していたからこそ、これだけの結果とタイトルを生み出すことができた。
あの時代を見ることができた人は幸せだった。そう言われるような最強ユニット、それがMSNだった。現代サッカーにおいて、これほど完璧で美しく、そして儚い攻撃ユニットが再び現れることはあるのだろうか。